■―新規事業開発プロジェクト・チームの設置
この時期、一般産業界においても従来主力としてきた事業が不振のため、あるいは省力化が進み余剰人員が増えたため、それ以外に活路を求めて新規事業に進出する企業が増えていた。また、労働人口の高齢化、経済のソフト化、エレクトロニクスを中心とする技術革新に対応して、多くの企業が自社に蓄積されている知識と技術をもって新規事業の開発、企業化を開始したが、建設業界も例外ではなかった。すでに同業各社では新規事業に取り組むことを明らかにし、そのための組織改革を実施したところもあった。
当時の当社は、今後予想される長期的な国内建設需要の伸び悩みに対処するため、エンジニアリング事業を含め、総合的な技術力および営業力の強化、海外建設事業の強化、生産性の向上等を中心とした建設事業の強化方策を推進するとともに、国内関連会社の強化に努力していた。
しかし、経営基盤を一層安定させるためには、建設事業の強化からさらに一歩進める必要があった。社内の各事業分野におけるすぐれた専門知識と豊かな経験を生かして、それを十分に発揮できる機会を広げ、組織の活性化を進めるとともに、業績の向上と会社の一層の発展に資することができるような事業を開発し、当社自体あるいは関連会社が建設業を基盤とした新たな事業へ進出することが課題となっていたのである。
このようなことから、当社および関連会社が積極的に新規事業へ進出することを検討するため、昭和59年(1984)8月、東京本社に新規事業開発プロジェクト・チームが設置された。
同年9月、「新規事業のアイデア募集について」の社長示達が出され、これに基づいて新規事業に関するアイデアの募集を行った。対象者は全役職員としたが、とくに課長職以上および工事事務所長には1人1件以上の提出を義務づけた。