大林組100年史

1993年に刊行された「大林組百年史」を電子化して収録しています(1991年以降の工事と資料編を除く)。
なお、社名・施設名などは、刊行時の表記のままとしていますので、あらかじめご了解下さい。

9 新規事業への取組み

■―新規事業開発プロジェクト・チームの設置

この時期、一般産業界においても従来主力としてきた事業が不振のため、あるいは省力化が進み余剰人員が増えたため、それ以外に活路を求めて新規事業に進出する企業が増えていた。また、労働人口の高齢化、経済のソフト化、エレクトロニクスを中心とする技術革新に対応して、多くの企業が自社に蓄積されている知識と技術をもって新規事業の開発、企業化を開始したが、建設業界も例外ではなかった。すでに同業各社では新規事業に取り組むことを明らかにし、そのための組織改革を実施したところもあった。

当時の当社は、今後予想される長期的な国内建設需要の伸び悩みに対処するため、エンジニアリング事業を含め、総合的な技術力および営業力の強化、海外建設事業の強化、生産性の向上等を中心とした建設事業の強化方策を推進するとともに、国内関連会社の強化に努力していた。

しかし、経営基盤を一層安定させるためには、建設事業の強化からさらに一歩進める必要があった。社内の各事業分野におけるすぐれた専門知識と豊かな経験を生かして、それを十分に発揮できる機会を広げ、組織の活性化を進めるとともに、業績の向上と会社の一層の発展に資することができるような事業を開発し、当社自体あるいは関連会社が建設業を基盤とした新たな事業へ進出することが課題となっていたのである。

このようなことから、当社および関連会社が積極的に新規事業へ進出することを検討するため、昭和59年(1984)8月、東京本社に新規事業開発プロジェクト・チームが設置された。

同年9月、「新規事業のアイデア募集について」の社長示達が出され、これに基づいて新規事業に関するアイデアの募集を行った。対象者は全役職員としたが、とくに課長職以上および工事事務所長には1人1件以上の提出を義務づけた。

オークエンジニアーズによる企画報告書
オークエンジニアーズによる企画報告書
オークエンタープライズが経営するレストラン「ル・ポンドシェル」(大阪大林ビル30階)
オークエンタープライズが経営するレストラン「ル・ポンドシェル」(大阪大林ビル30階)

■―アイデアの認定と採用

提案されたアイデアは2,289件にのぼった。これを審査基準をもとに個別に評価して、61の事業を第1次の有望事業として選出したが、最終的には49事業に絞り込まれた。この49事業を、①新規事業として事業化を図るもの(12事業)、②他の部門および子会社で今後の検討課題とするもの(11事業)、③新規事業として事業化の見込みがあまりないもの(26事業)の三つに分類し、事業化の検討や損益計算を行い、これを「新規事業の概要」として取りまとめた。

そして、第1順位の12事業のうち建設総合コンサルタント、テニスクラブ、旅行代理店、老人医療コンサルタント、高級老人ケアマンション、小型電算機およびソフトの販売の6事業を新規事業の対象として認定し、一部に再検討を加え、順次事業化の推進を図ることとした。

ここにおいてプロジェクト・チームは一応の成果をあげたため、当初の予定どおり昭和61年(1986)7月に解散した。

■―事業展開とその変化

新規事業開発プロジェクト・チームを設置以来、当社は資産の有効利用も含めて積極的に新規事業への取組みを行ったが、昭和59年(1984)以降に新たに設立した会社の主なものは下表のとおりである。

新規事業の展開については、59年当時は企業が保有する資産、技術、豊かな知識や経験をもつ人材を活用して、建設事業以外で本業を補完していこうという考えであった。しかし、61年末以降の景気拡大期に入るころには、事業のソフト化、ハイテク化、情報化および新規事業に対応した人材の育成、ノウハウの蓄積を推進するなどして、新しい成長産業を目指して積極的に事業展開し、業容の拡大を図るものとなっている。

一方、人材の活性化などを主眼とした会社設立もある。たとえばアトリエ・エイティエイトは、社内組織の制約をはなれて、インテリアの設計等に関する新しいアイデアや能力を存分に発揮してもらうため、その舞台を提供したものである。

また、一般的に新規事業の失敗の要因をみると、起業者精神に富んだ人材の不足がトップにあげられている。このように異分野の事業に進出するには、その事業に興味があり、熱意をもった人材を得ることが成功のキーポイントとなることから、家具・インテリア事業プロジェクト・チーム(平成元年12月設置)については、社内公募によって要員を配置した。このプロジェクト・チームは、今後ますます多様化、高級化するニーズに応えるため、家具・インテリア事業に関する営業、輸入業務などの調査、研究を実施し、ノウハウの蓄積を図ることを目的に設置したものであるが、平成2年8月には家具の輸入販売を目的としたコレンテの設立をみるに至っている。

なお、59年以降の新規事業の展開に伴い、61年6月、定款の事業目的に大幅な追加・変更が行われ、さらに平成元年6月には「測量」「金銭の貸付、債務の保証その他の金融業」が加えられて、当社の事業目的は平成3年3月末現在次のようになっている。

事業目的

  • 建設工事の請負
  • 地域開発、都市開発、海洋開発、環境整備その他建設に関する事業
  • 前2号に関する調査、測量、企画、立案、設計、監理等エンジニアリング、マネージメント及びコンサルティング業務の受託
  • 住宅に関する事業
  • 不動産の売買、交換、賃借及びその仲介並びに所有、管理及び利用
  • 建設機械、建設機械装置及び建設用仮設機材の製作、調達、販売及び賃貸
  • 建設用コンクリート製品、耐火・不燃建築材料、内外装建築材料、家具及び建築用木工品の製造及び販売並びに土木建築用資材の販売
  • 建物及び設備の保守管理の受託並びに保安警備の受託
  • コンピュータの利用に関するソフトウェア、工業所有権及びノウハウの取得、開発、実施許諾及び販売
  • 情報処理サービス業、情報提供サービス業及び電気通信回線の提供
  • コンピュータ等電子事務機器の販売、賃貸及び保守管理サービス
  • 厚生、医療、スポーツレジャーの各施設、ホテル及び飲食店の経営並びに旅行業代理店業
  • 損害保険代理業及び自動車損害賠償保障法に基づく保険代理業
  • 造園、園芸及び植樹に関する事業
  • 金銭の貸付、債務の保証その他の金融業
  • 前各号に関連する業務
家具・インテリア事業の新会社「コレンテ」のメンバー
家具・インテリア事業の新会社「コレンテ」のメンバー
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