大林組100年史

1993年に刊行された「大林組百年史」を電子化して収録しています(1991年以降の工事と資料編を除く)。
なお、社名・施設名などは、刊行時の表記のままとしていますので、あらかじめご了解下さい。

6 昭和から平成へ

■―昭和天皇崩御と御大喪

先の天皇陛下は昭和64年(1989)1月7日、87歳をもって崩御され、同月31日、昭和天皇のご追号を受けられた。在位期間は62年に及び、歴代天皇のなかで最長であり、また天皇として最もご長寿であった。

国民は深い悲しみとともに、一つの時代が終わったとの無量の感慨をもって、昭和天皇の崩御を悼んだ。マスコミがこぞって「激動の昭和終わる」と報じたように、戦争と平和、苦難と繁栄という歴史を刻んだ昭和時代は幕を閉じ、新しく平成の時代を迎えた。

昭和天皇崩御後、大喪儀の儀式は1年間にわたり粛々と進められていったが、戦後の新憲法下で初めて行われる御大喪に、内外の注目が集まった。陵所は武蔵陵墓地内に決定され、名称は「武蔵野陵」とされた。国の儀式とされた「大喪の礼」は平成元年2月24日、新宿御苑において、164カ国・28国際機関代表らも加わり約9,800名の参列のもと、おごそかに執り行われた。

当社はこれまでも皇室関係の種々の工事を担当してきた歴史があるが、このたびも、大喪儀のうち「陵所の儀」に伴う御陵造営工事、祭場殿等布設工事、それに続く御陵営建工事等を拝命したのであった。

大林社長は工事拝命に際し、1月11日に次のとおり社報号外をもって社内に周知し、無事大任を全うするよう訓示した。

大行天皇御陵御造営工事の御下命について

社長

大行天皇におかせられましては、去る1月7日に崩御あらせられました。誠に痛惜の極みであり、ここに謹んで哀悼の意を捧げる次第であります。

御斂葬にあたり、東京都八王子市の武蔵陵墓地に新しく御陵が造営されることとなりましたが、このたび当社は新陵御造営工事の御下命を賜わる栄に浴しました。

当社は、これまでにも明治天皇の御陵である伏見桃山御陵をはじめとして伏見桃山東陵(昭憲皇太后御陵)、多摩御陵(大正天皇御陵)、多摩東陵(貞明皇后御陵)の御造営工事に従事させていただく光栄にあずかっており、いずれの工事もその重大なる任務を見事に果たし、これを無上の栄誉としてまいったのであります。

このたびの新陵御造営工事にあたり、同工事に関与する役職員はもとより社内各位においてもよく自戒精進し、無事大任を全うすることを期したいと存ずる次第であります。

以上

こうして当社は、昼夜をわかたず工事に精励し、大喪の礼に引き続いて挙行された陵所の儀のつつがない進行に誠心奉仕したのである。

その節、当社は藤森昭一宮内庁長官より「昭和天皇大喪儀に当たり山陵新営工事を短期間に竣工し大喪儀の滞りない挙行に力を尽くされました よってここに深く感謝の意を表します」との感謝状をいただいた。

陵所の儀の後、御陵の営建工事は本格化し、約1年後の2年1月、無事完了してその大任を果たした。そして、同月7日、「山陵一周年祭の儀」が御陵所にて執り行われた際、天皇、皇后両陛下から工事に対するねぎらいのお言葉を大林会長ならびに津室社長らに賜ったのである。

完成した昭和天皇陵(武蔵野陵)
完成した昭和天皇陵(武蔵野陵)
山陵竣工奉告の儀のときの当社関係者一同
山陵竣工奉告の儀のときの当社関係者一同

■―即位の礼、大嘗祭

皇位を継承された天皇が即位を内外に宣言される「即位の礼」、そして即位後の新嘗祭を大規模に行う「大嘗祭」の諸儀式は、平成2年(1990)1月23日、皇居・宮中三殿(賢所・皇霊殿・神殿)に天皇自らその期日をお告げになる「期日奉告の儀」から始まった。

同年2月8日には「斎田点定の儀」が行われ、大嘗祭で使われる米を作る斎田として、東日本の悠紀(地方)に秋田県が、西日本の主基(地方)に大分県が決定された。その収穫の「斎田抜穂の儀」は同年9月28日と10月10日に行われたが、当社はこれに伴う悠紀田・主基田の諸施設布設工事を拝命した。

即位の礼は、「賢所大前の儀」「即位礼正殿の儀」「祝賀御列の儀」「饗宴の儀」などからなるもので、2年11月12日から15日にわたって行われ、12日の正殿の儀には、元首級約70名を含む158カ国・2国際機関の外国賓客をはじめとする2,223名が参列した。

大嘗祭は2年11月22日夜から翌未明にかけて行われた。

主たる儀式が執り行われる大嘗宮の建設工事は、当社を含む千代田地区諸工事共同企業体(5社)が拝命し、当社はその第1工区として、廻立殿、斎庫および荷受け所、雨儀御廊下、雨儀廊下、衛門幄、庭燎舎等の施工を担当し、誠心奉仕して無事に任を終えた。

なお、大嘗祭における「大嘗宮の儀」「悠紀殿供饌の儀」「主基殿供饌の儀」、その後の「大饗の儀」には、津室社長が参列、出席の栄に浴したのであった。

大嘗宮配置図
大嘗宮配置図
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