■―時流に応える設計部門
昭和61年(1986)末から続く景気拡大は、企業はもとより個人にも経済的余裕をもたらし、それは事業の拡大を図る新たな設備投資に、あるいは個人の住宅や高級消費財の取得へと向かわせた。金融面など国際都市としての東京の地位が高まるにつれ、東京圏への一極集中は一段と加速されていき、オフィスビル、マンション、ホテル、コンベンションホール等の建設計画が相次いだ。そしてそれらの建設が、設計コンペ、事業コンペを通じて行われることも増大した。加えて、高度情報化の時代を迎えて、これら建築物にはデザインの面でも、また内部の設備・施設についてもよりユニークなものが求められ、発注者の要望はより高質化、多様化した。インテリジェントビルの登場もこのころからである。
こうした時流のなか、建築需要の受注伸長を図るうえでも、設計部門の果たす役割に大きな期待がもたれた。これからの時代にふさわしいオリジナリティを生み出し、クリエイティブな発想が横溢する活力ある土壌をつくるにはどうすればよいのか。こうした問題意識のもとに、62年6月、東京本社・本店の設計部門について大幅な組織改正が実施されたのである。改正の内容は次のとおりである。
第1に、企画設計業務を専任する部を設けた。これは、増加するコンペに一層力を入れて対応していけるよう、企画提案やとくに命ぜられたプロジェクトを担当することとした。
第2に、従来の設計各部が意匠・構造・設備といった設計の分野別であったものを改め、オフィス・店舗・ホテル・工場といった建物の用途別に担当する部に編成された。最近の建物の機能の高度化に伴い、建築計画の段階から高度な専門知識と意匠・構造・設備の各設計分野の緊密な連携をもって対応していくためで、建物の用途別に組織が一体となって取り組む体制をしいた。
第3に、当社設計による建築工事の工事監理体制について、対外的に明確な対応ができるよう、設計工事監理部を設けた。自らの手で自らの品質管理を厳しくとらえる体制をより明確にし、発注者の当社に対する信頼をより高めていくためである。
第4に、設計業務のスムーズな進行が効率と品質を高めるうえで重要な課題であることから、東京本社設計管理部の役割を大きく広げ、人員の配置計画から、設計業務の総合調整、各種設計基準の標準化、さらには国内外にわたる関係情報の収集までを行うこととした。
改正後の東京本社設計各部の業務体制は、右表のとおりである。
なお、原子力関連施設の設計業務は、平成元年5月の原子力本部の組織改正の際に同本部に移管されたが、そのことは前章に記述した。