大林組100年史

1993年に刊行された「大林組百年史」を電子化して収録しています(1991年以降の工事と資料編を除く)。
なお、社名・施設名などは、刊行時の表記のままとしていますので、あらかじめご了解下さい。

6 新たに長期経営計画を策定

■―策定の背景

かつて高度成長の時代には「所得倍増計画」に代表されるように、政府が長期的展望のもとに経済規模の拡大を目的として経済計画を作成し、財政を運営していた。産業界もこれに対応して国の示した計画を指標とし、それぞれ量的拡大を前提に長期的目標を設定し、経営を進めることが可能であった。

石油危機によって高度成長は頓挫し、先行きの見通しが立てにくい混乱の時代に陥ったが、昭和50年代半ば以降ようやく環境は落着きをみせてきた。今後は従来のような高度成長は望むべくもないが、経済の動向は比較的安定した軌道をたどるものと思われた。

こうした情勢を見すえて、当社では再び長期経営計画を策定することとした。ただ、為替の大幅な変動など不確定要素も少なくはなく、環境の急変も考えられるので、長期計画も状況の変化に応じて、そのつど修正を加えていく柔軟性をもつことを前提とした。

■―計画の概要

今回の長期経営計画は昭和56年(1981)4月~61年3月の5カ年を対象とするもので、「会社の総合力を結集して営業力の一層の強化を図るとともに、業務の効率化を推進し施工部門その他の生産性の向上によって、業績の拡大と資本の充実を目指すもの」とされた。

以下8項目の基本方針のもとに、それぞれ次の方策が立てられた。

  • 注の拡大と受注工事の質的向上
    次の重点施策に基づいて、計画期間中の受注を年平均10.5%増加させる。
    ①プロジェクト・チーム制による大型工事への対応
    ②地域別需要に見合った効果的な営業展開
    ③保有技術の活用と新技術、新工法、周辺技術を複合した技術営業の展開
    ④開発企画型営業の展開
    ⑤設計部門の充実と受注への寄与
    ⑥営業情報網の強化
    ⑦建設事業分野におけるEC化
  • 技術の開発と活用
    ①需要および新技術の動向に対応した中長期開発テーマの設定
    ②基礎技術の開発の推進
    ③営業、施工部門を包括した総合的技術開発体制の確立
    ④他産業との連携による総合的技術開発
    ⑤コンピュータによる技術情報検索システムの開発
  • 生産性の向上
    「業務処理効率の向上」、「組織の活性化」および「人材の活用」を3本の柱に、次の重点施策に基づいて、計画期間中に職員1人当たり施工高を45%引き上げるとともに、売上高一般管理費比率をほぼ0.4%引き下げる。
    ①オフィス・オートメーションの推進
    ②常設部門業務の合理化、省力化
    ・中長期的観点にたった各部門の業務分担の見直しおよび組織の改善
    ・各部門のシステム開発能力の向上による部門主体の電算機利用
    ・コンピュータによる設計システムの自動化
    ・マイクロフィッシュシステムによる事務所スペースの効率化
    ③現場管理業務の合理化およびオフィスコンピュータによる施工管理のシステム化の展開
    ④社会的ニーズに対応した品質管理マニュアルと品質管理体制の整備
    ⑤協力業者に対する指導、協力の強化および新規業者の育成
    ⑥中間層の活用を図るための組織、人事制度の確立
    ⑦専門的な知識教育を行うための教育体系の整備および教育機器・施設の充実
    ⑧提案制度の活発化、ペーパーレスオフィス運動、SK運動、KY運動、全社営業マン運動など業務改善運動の一層の推進
  • 財務体質の改善
  • 開発物件の事業化促進
  • 海外事業の収益性の向上
    ①営業地域と工種選択に重点をおいた営業展開
    ②現地法人のローカル化
  • 労働災害の絶滅と安全の確保
  • 広報活動の充実

しかし、なんといってもその中心は、第1の受注量の確保にあった。長期経営計画策定の基本姿勢について岡田副社長は『マンスリー大林』において次のようにその重要性を説いた。

「当社が企業としての体面を維持し、業界における地位をさらに確固たるものにしていくための最大の課題は受注量の確保にある。

利益の向上や経営体質、財務内容の改善も受注量の確保なしには達成は困難であり、とくに一定件数の大型工事を獲得していくことが肝要である。そのためには、営業の長期的な戦略および戦術を樹立してこれを実践することが最も必要となる。

すなわち、どの工事を重点目標とするか、獲得対象を絞り、早くから受注体制を整えておかなければならない。今後どのような分野の事業に成長性があるのかよく見きわめるとともに、技術開発の方向についても、工事の獲得を常に念頭に置いて戦略を練ることが大切である。」

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