■―深刻化する受注の伸び悩み
この時期の建設需要は、まさに「建設業冬の時代」といわれる低迷状況にあった。当社は、建設業の生命線ともいえる受注量の確保のため、後に述べるように営業部門の強化、技術開発部門の強化などに努めた。とりわけ、建設需要の質的変化に対応した柔軟な思考と営業体制の確立、プロジェクトへの企画提案能力の向上などに注力してきたのである。そしてまた、国内の受注を補うように積極的に海外工事の獲得を図った。当社の海外工事の受注高(現地法人分は含まない)は、昭和58年度(1983年度)にはこれまでの記録であった53年度実績を突破し、さらに61年度にはそれを大きく上回る過去最高額(756億円余)を達成した。建設事業の受注高に占める海外工事の割合はおよそ2~4%内外であったが、58年度は7.7%、61年度は9.6%となっている。
しかし、国内の建設市場の厳しい逆風のなかで、当社の受注の伸びは足踏み状態を続けたのである。建設事業の受注高は、56年度に過去最高を記録したあとは、57年度から59年度まで3年連続してその実績を超えることはできず、61年度にようやく回復といえる上昇をみたが、59~61年度の間は、完成工事高が受注高を上回るいわゆる“食いつぶし”状態が続く憂うべき事態となった。