大林組100年史

1993年に刊行された「大林組百年史」を電子化して収録しています(1991年以降の工事と資料編を除く)。
なお、社名・施設名などは、刊行時の表記のままとしていますので、あらかじめご了解下さい。

1 下降し始める業績

■―深刻化する受注の伸び悩み

この時期の建設需要は、まさに「建設業冬の時代」といわれる低迷状況にあった。当社は、建設業の生命線ともいえる受注量の確保のため、後に述べるように営業部門の強化、技術開発部門の強化などに努めた。とりわけ、建設需要の質的変化に対応した柔軟な思考と営業体制の確立、プロジェクトへの企画提案能力の向上などに注力してきたのである。そしてまた、国内の受注を補うように積極的に海外工事の獲得を図った。当社の海外工事の受注高(現地法人分は含まない)は、昭和58年度(1983年度)にはこれまでの記録であった53年度実績を突破し、さらに61年度にはそれを大きく上回る過去最高額(756億円余)を達成した。建設事業の受注高に占める海外工事の割合はおよそ2~4%内外であったが、58年度は7.7%、61年度は9.6%となっている。

しかし、国内の建設市場の厳しい逆風のなかで、当社の受注の伸びは足踏み状態を続けたのである。建設事業の受注高は、56年度に過去最高を記録したあとは、57年度から59年度まで3年連続してその実績を超えることはできず、61年度にようやく回復といえる上昇をみたが、59~61年度の間は、完成工事高が受注高を上回るいわゆる“食いつぶし”状態が続く憂うべき事態となった。

受注高・完成工事高の推移
受注高・完成工事高の推移

■―低下する利益

当社は、利益の面でも苦戦を強いられた。縮小し停滞する建設市場をめぐって建設業者間の受注競争は一段と熾烈化し、受注時の予想工事利益率は顕著に悪化していった。

昭和57年度(1982年度)から61年度までその利益率の推移をみると、土木工事では57年度に前年度比で2ポイントと大幅に低下し、その後一進一退を繰り返しながら、ようやく61年度に従前の水準を回復するに至った。一方、建築工事では、57年度に前年度比1.1ポイントダウンした後は、ジリジリと低下を続け、61年度になると、対56年度比で2.2ポイントもの低下となった。受注時点での予想利益のままでは所定の営業利益を出すことも厳しい状況であったわけである。

こうした状況にあって、工事現場では工事原価の低減のため、CD(コストダウン)運動などが展開され、また常設部門では冗費の排除など懸命の努力が続けられた。しかし、それでもなお一定の増加を続ける一般管理費の増加部分を吸収することができず、営業利益は57年度を境に下降を続け、61年度になってやっと上向きに転じた。経常利益、当期利益についてもほぼ同じ経過をたどったが、61年度の当期利益の減少は、事業税の会計処理方法を現金基準から発生基準に変更したことによるものである。当社の57~61年度の損益の状況は次表のとおりである。

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