大林組100年史

1993年に刊行された「大林組百年史」を電子化して収録しています(1991年以降の工事と資料編を除く)。
なお、社名・施設名などは、刊行時の表記のままとしていますので、あらかじめご了解下さい。

5 組織的営業活動の強化

■―営業情報整備プロジェクト・チームの設置

当社は低成長時代の経済・産業構造の変化に対応して、開発企画型営業の推進、技術の優位性を生かした営業活動、エンジニアリング事業の展開を図ってきた。また、「全社員が営業マン」のスローガンのもと実施した営業情報の提供運動は、相応の成果をあげた。

しかし、情報を早期にキャッチして組織的な営業活動を行い、これを最終的には工事の獲得に結実させていく力は、十分であるとはいえなかった。業者間の厳しい受注競争に打ち勝つためには従来にも増して情報の活用、セクショナリズムを排した全社一体の組織的営業の推進が必要であった。

昭和59年(1984)の年頭、大林社長は「58年度上半期における工事受注高は、前年同期に比べやや増加はしたが、経営計画の目標額には及んでいない。本年度は世界不況も回復の兆しがあり、受注環境の変化の機をとらえて、受注に積極的、強力に取り組み、受注高を大幅に増加させねばならない」と訓示し、さらに次の方針を示した。(要旨)

「営業の実をあげるには組織的に営業活動を行う必要がある。組織的営業強化のためには、営業部はもとより、全社を挙げて早く、広く、きめ細かく、的確に営業情報を把握するとともに、入手した情報をより有効に営業活動につなぐことができるよう営業情報システムおよび営業体制を整備する必要がある。

営業情報システムの整備については、過去の営業活動の状況および受注実績、現在の入手の状況および確度、新しい工事計画等の情報を、日々の営業活動に有効に活用できるよう総合的に蓄積、管理運用できるようなシステムを早急につくり上げねばならない。限られた陣容で効率的な営業活動を行っていくためには、営業活動について活動計画、活動状況等をデータとして組織的に把握し、管理する体制をつくる必要がある。」

この方針を受けて、59年8月営業情報整備プロジェクト・チーム(担当役員=専務取締役安藝恒夫)を設置し、データベースとしての営業情報の整備と活用システムの確立を図り、課題であった営業関連部門の組織的営業の強化方策を検討することとした。

■―営業情報システムの整備

営業情報整備プロジェクト・チームは、当初1カ年の予定で東京本社に設置されたが、1年間延長され、昭和61年(1986)7月まで活動した。

プロジェクト・チームは、まず営業活動を効果的に行ううえで必要な情報の種類や収集方法、その利用範囲、出力の範囲および出力方法について検討を進めた。また同時に、電算センターの協力を得て情報システムの開発に着手した。

整備の対象とされた情報の種類は、大きく工事関係情報(10種類)、発注者情報(7種類)、営業推進情報(23種類)に分類した。これらのうち、25種類のものが緊急整備の対象である第1次全社統一電算化情報としてインプットされ、プロジェクト・チームの設置期間中に整備を完了し、稼働した。

次いで、9種類が第2次全社統一電算化情報として選定され、プロジェクト・チームの解散後に営業情報整備担当部門(土木本部管理部および建築本部営業管理部)によって整備された。残りの6種類については、特定の部門にかかわりの深い情報であって、当該部門の利便性に重点がおかれる性質のものであったので、それぞれの部門がプロジェクト・チームの示した整備の概要に基づき、独自で順次整備していった。

この営業情報システムの特徴としては、①情報入手部門が直接端末機からホストのデータベースに入力する方式としたこと、②検索・表示も端末機の画面に示されたメニューに即して利用者が直接操作する方式としたこと、③利用者にIDカードを配付し、所属・職位によって検索できる情報の種類・表示内容に制限をつけるセキュリティーシステムを採用したことがあげられる。

またシステムの整備に伴って、新たに営業情報システムの業務処理上全社的に周知を要するものを集大成して、『営業情報整備体系』(全4冊)にまとめ関係部署に配付した。

ここに全店共通の営業情報の集積と、その即時的利用が可能となるシステムが完成されたのである。

営業情報検索システムの情報メニュー画面
営業情報検索システムの情報メニュー画面
IDカード
IDカード
『営業情報整備体系』(全4冊)
『営業情報整備体系』(全4冊)

■―営業推進体制に関する答申

プロジェクト・チームのもう一つの任務であった「営業情報システムを活用した効果的な営業推進体制の検討およびその確立」については、現状の土木本部および建築本部の国内営業体制を当面維持することとして整備案をまとめ、昭和61年(1986)3月社長に答申された。

この答申に関し、大林社長は営業業務をより効率的に進めるための組織の具体的検討を速やかに行うよう指示した。そしてそれは、後年の大幅機構改革へとつながっていった。

答申の骨子は次のとおりであった。

1 建築について

①建築本部内に「東京建築支店長」格の専任役員の任命
②建築本部営業管理部を分割し、本部長スタッフ部と「東京建築支店長」スタッフ部の新設
③大型開発プロジェクトに対する体制整備と建築本部開発企画部の機能強化
④中長期的な重点建設市場分野および重点施主の設定に基づく営業部の担当施主および要員の見直し
⑤建築部の分割による受注・生産機能の明確化

2 土木について

①土木本部内に「東京土木支店長」格の専任役員の任命
②土木本部東京営業管理課および本店土木営業管理課の改組
③開発企画的営業組織体制の整備

3 土木建築共通

①工事事務所の営業活動を促進するための体制整備
②営業活動の組織的・機動的展開のための簡便なプロジェクト・チーム設置制度の制定

4 営業推進体制の整備と並行して改善を検討する必要がある項目

①海外工事担当部門の責任体制の明確化
②設計部のあり方および業務の見直し
③若手営業係員の能力開発のために定期ローテーションの実施
④工事計画情報の入力量を増大させる方策の検討、実施

■―営業部門の拡充

受注環境の変化に伴って昭和57年(1982)以降、営業活動を強化することを目的としたいくつかの組織的改正が行われているが、そのうち重要なものについて次に記す。

●建築本部つくば万博部の設置(57年6月)

日本万国博、沖縄海洋博に続くわが国3番目の国際博覧会として、「人間・居住・環境と科学技術」をテーマに、茨城県筑波研究学園都市で開催された国際科学技術博覧会(60年3月17日~9月16日)は、折からのハイテクブームに乗って人気を博した。

この博覧会の開催に対応して、57年6月、東京本社建築本部に「つくば万博部」を設置し、同博覧会のパビリオン建設など建設工事の積極的な受注活動を展開した。

●テクノポリス委員会の設置(58年9月)

テクノポリスとは、21世紀を目指した新しい地域開発の一方策として、通産省がその建設構想を進めているもので、産業、学術および住空間が有機的に結合された新しい「まち」であり、その地域の特性を活用して地元が主体的に進める地域開発である。

58年9月には「高度技術工業集積地域開発促進法」(テクノポリス法)が施行され、候補地の指定、地方自治体の推進体制づくりが行われようとしていたため、テクノポリスに関する調査、企画および設計の受託ならびに土木・建築工事の受注を図るため、当社も東京本社に「テクノポリス委員会」を設置することとなった。

●関西国際空港土木営業部、同建築営業部、同営業連絡会、泉南営業所の設置(60年6月)

関西国際空港は、当初平成3年の開港を目指し、大阪湾南東部の泉州沖5㎞の海上に建設されることになった。

当社は同空港の建設および開港に関連する工事の営業活動を効果的、積極的に推進するため、本店に関西国際空港土木営業部、関西国際空港建築営業部を新設するとともに、関係部門間の情報の交換、調整等を行うため関西国際空港営業連絡会を設置した。

また、新空港関連工事の発注が見込まれる大阪府泉南地区において営業力の強化を図り、大阪府泉佐野市に泉南営業所を設置した。

●福岡、仙台支店を九州、東北支店に名称変更(62年4月)

福岡支店および仙台支店における地域営業活動を、円滑かつ積極的に行うため、より広域を意味する名称として、それぞれ九州支店、東北支店に変更した。

科学万博・みどり館内部
科学万博・みどり館内部
「科学万博―つくば'85」会場全景
「科学万博―つくば'85」会場全景
科学万博ポスター(デザイン・五十嵐威暢)
科学万博ポスター(デザイン・五十嵐威暢)
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