当社は平成3年(1991)、創業100年を迎えた。あたかも一段と飛躍しようという時にあたり、新世紀へ向けて新たな第一歩を踏み出すという意義を確認し、また当社の今日あるを支えてくれた得意先、株主、従業員、協力会社の方々など、さらには社会への感謝の気持ちを表すため、数々の記念行事・事業を行った。
6 創業100年を迎えて
■―記念式典
100年記念諸行事はまず記念式典をもって開始された。
平成3年(1991)10月15日午前7~8時、神戸市東灘区御影山手の大林家墓所において大林家親族、当社役員、関係会社役員代表が参列して墓前祭が、また午前10~11時、大阪市生國魂神社拝殿において当社役員、常勤顧問、在阪工務監督、本店統括部長、本店長付、本店部室長、関係会社役員代表が参列して神前祭が、それぞれ厳粛かつとどこおりなく執り行われた。
午前11時30分からは大阪コクサイホテルにおいて記念式が開かれた。大林会長挨拶、津室社長式辞に続き、関係会社代表・大林道路森社長、柏会(当社のOB会)の懸山会長、林友会連合会の山岡会長よりそれぞれ祝辞があって、表彰に移り、特別功労者(16名)、50年以上勤続者(16名)、40年以上勤続者(165名)を表彰し、被表彰者を代表して岡田副会長が謝辞を述べた。
次に大林会長への感謝状贈呈、林友会連合会からの記念品(彫刻1点)贈呈、創業100年記念コーポレートソング「風を起こす者」歌唱と続き、津田顧問弁護士の発声による万歳三唱をもって式を終わった。
東京本社をはじめ各店には、大阪の記念式会場から式次第が衛星中継され、同時刻にそれぞれ自店で式に参加した。なお、四国支店は同年9月に新社屋・高松大林ビルを竣工し、この日の記念式を新築の社屋で迎えたのであった。
午後からは全社休業とし、各職場において祝宴をもち、創業100年を迎えた当社の発展を祝った。
記念式における会長挨拶および社長式辞は、要旨次のとおりである。
創業百年を迎えて
大林会長
1892年、明治25年の創業以来、創業者大林芳五郎は血のにじむような努力の結果、わずか20数年で全国一流業者の地位を確保し、その後も当社は大正、昭和、平成と時代の変遷につれて興隆躍進し、わが国の産業、経済、文化の発展に大きく貢献してきた。
当社が幾多の風雪に耐えぬき今日の大をなし得たのは、申すまでもなく、得意先の皆さまのお引き立ての賜物であるが、同時に、当社の発展のために尽くした先輩役職員のお陰でもあり、私は、これらの方々に深甚なる敬意を表します。また、永年にわたり当社の事業にご協力をくださった林友会をはじめ協力会社の皆さまに、心から感謝申しあげます。
さて、当社百年の歴史をひもとくとき、諸先輩が築き上げられた当社の伝統に思いを寄せざるを得ない。
それは、第1に、未知のものに挑戦し、これを見事に成し遂げてきたことである。この積極果敢な行動と誠心誠意ことに当たる精神は、会社を発展させる大きな力となったのであり、このことを改めてよく認識したい。
第2に、常に科学性・合理性を尊重し、この上に立脚し経営を進めてきたことであり、技術の開発、改善、施工の機械化、組織、制度等で、業界の先がけとして行った事柄は数多くあげることができる。
第3には、人材の育成と活用であり、文字どおり「事業は人なり」を実践してきた。
これらの伝統により、当社は社会的信用を高め、近年著しい業績の伸長をみるなかで、記念すべき創業百年を迎えることができた。
今や企業が利益追求のみで動く時代はすでに過去のものとなり、社会的責任を有する企業市民としての自覚をもった責任ある行動が、企業に対して求められるようになっている。当社では、昨年CIを導入し、企業理念、経営姿勢、行動規範を制定した。そして、大林グループ長期経営ビジョン「大林ルネッサンス111」の策定を機に、社会への貢献、地球環境への配慮、社員の個性・創造性の重視など人間尊重の企業姿勢を明確に打ち出したところであり、今後、これに向けての経営を力強く推進していくこととしている。
今や、世界は歴史的な激動の時代にあり、政治、経済、社会のあらゆる面で大きく変化しようとしている。
皆さん、さあ、力を合わせて新しい時代に挑戦し、希望に満ちた創業第2世紀を力強く歩んでいこうではありませんか。
創業第2世紀のスタートラインに立って
津室社長
大林組創業百年記念式典にあたり、私はまず、幾多の風雪に耐えぬき、今日を築き上げられた諸先輩の英知とご努力に、心からの敬意と感謝の念をささげます。
さて、本日私は、当社の将来の事業展開について一言申し述べたいと思う。
創業第2世紀のスタートラインに立って、私の描く企業像は、国際化の進展につれ、地球規模で価値ある事業を展開するエクセレントカンパニーであるということ。このとき、当社の事業領域は一段と広がるとともに、事業の内容も多様化、高度化している。次に、情報化、高付加価値化が進み、空間と時間に新しい価値を創造する知的集団であるということ。私たちは今、こうした企業像を現実のものとすることができる地点に立っていることを確認しておきたい。
政治・経済が国際的規模で激しく急速に変化する時代に対応し、当社は数年にわたり、役職員の意識変革、企業体質の革新に取り組み、大幅で抜本的な組織改革、長期経営ビジョン「大林ルネッサンス111」の策定などを行った。こうした企業革新により、役職員が一体となって個々のもつ知恵と力を有機的につなぎ、ダイナミックな組織としてその総合力を高めることが、経営基盤を強めることになる。
現在の重要課題の第1は、工事の受注高を一段と伸ばすため、営業力を高度化することである。従来のチャンネルに限ることなく、情報を手広く早期に入手し、これをもとに総合的な戦略を策定し、敏速かつ積極的な行動によって、気迫ある営業を展開することが肝要であり、今後、ソフト、ハードを結びつけ、それらが縦横に組み合わされた総合的な営業体制を確立したい。
一方、技術開発は、大企業としての営業力の高度化に不可欠なものであり、今後とも世界に通用する技術の開発に力を注ぐ所存である。
第2には、業容の拡大と高度化に対応して、企業体質の革新を一層進めていくことであり、まず問題解決型の組織を目指し、機動性に富む組織を持続したいと思っている。また、人間尊重の企業として、社員が誇りと参画意識をもって、能力、個性、創造力を十分に発揮できる制度を実現し、人の活性化を図っていきたいと考えている。
次に、生産分野については、工事の施工能力を飛躍的に拡大させるという長期的な視野から、新生産システムの構築を検討しており、全自動ビル建設システムを業界に先がけ実用化する。建設のハイテク化、施工の省力化、合理化を図るため、この分野の技術開発に今後とも力を注いでいきたい。
変化こそが前進を産む。一人一人がチャレンジ精神をもって課題に取り組み、新しい考え方、新しいやり方で価値ある一歩を踏み出し、さらに集団として大きな行動を起こし、着実な成果をあげていただきたい。
私は、全役職員の皆さんとともに、確信をもって、創業第2世紀を切り拓いていきたいと考えている。
■―数々の記念行事・事業を実施
記念式典をはさんで、平成3年(1991)から翌4年にかけて創業100年記念行事・事業が多方面にわたって繰り広げられ、文化的・社会的なイベントのほか、得意先・株主・協力会社への感謝、家族慰安、施設の改善、社史編纂などが行われた。
●フォーラムへの協賛とシンポジウムの開催
創業100年記念事業の幕開けとして、国連大学「地球環境フォーラム」への協賛と、当社主催による国際シンポジウム「21世紀“世界都市大阪”の空間と文化の条件」を開催した。
<国連大学「地球環境フォーラム」>
地球環境の保全は世界共通の問題として大きくクローズアップされ、長期的展望をもった対策が緊急に講ぜられる必要が叫ばれるようになった。このような情勢を背景として、1992年(平成4年)にはブラジルのリオデジャネイロで国連環境開発会議(UNCED)が開催されることが決定されていた。平成3年、国連大学はこれまでの地球環境問題に関する活動の一環として「地球のモニタリングとアクション」をテーマに、国際的フォーラムを東京で開催することにしたが、当社はこれに協賛しその実現に貢献したのである。
このフォーラムは広く内外の関心を集め盛大に開催され、NHKの衛星放送を通じて同フォーラムおよび関連番組も放映されて、地球環境への国民の関心を盛り上げた。フォーラムの概要は次のとおりであった。
主催=国連大学 後援=文部省・外務省・環境庁・建設省
協賛=当社 コーディネーター=加藤秀俊
平成3年7月17日 午前10時~午後5時 新高輪プリンスホテル
参加者 約700人
講演者・パネリスト
H・グリグリーノ・デソウザ(国連大学学長)、ローランド・J・フュックス(国連大学副学長)、ムスタファ・K・トルバ(UNEP<国連環境計画>事務局長)、ピーター・H・レーブン(米国ミズーリ州植物園長、全米科学アカデミー事務局長)、S・イクティアック・ラスール(地球圏/生物圏国際共同研究計画データ情報システム<IGBP-DIS>NASA担当部長)、樋口敬二(名古屋大学名誉教授)、吉良竜夫(滋賀県琵琶湖研究所長)、内嶋善兵衛(お茶の水女子大学教授)、平 啓介(東京大学海洋研究所教授)、瀬川爾朗(東京大学海洋研究所教授)、久保幸夫(慶應義塾大学教授)
<国際シンポジウム「21世紀“世界都市大阪”の空間と文化の条件」>
当社生誕の地「大阪」を中心とする関西圏では、関西文化学術研究都市、関西国際空港、りんくうタウン、明石海峡大橋等の数々のビッグプロジェクトが展開され、21世紀に向けての都市づくりが進められている。
一方、アジアあるいは環太平洋の拠点として、大阪の機能と成長が期待されるなか、経済分野以外にも、大阪がもつべき文化機能や果たすべき文化的役割について独自のプログラムづくりが求められている。大阪が、真の世界都市として貢献できる都市に成長していくには、経済的機能だけではなく、高度を文化機能をもち、さまざまな国際的機能を果たしていく必要があるといえよう。
こうした認識のもとに、当社は「世界都市」をキーワードに、大阪がもつべき都市の空間と文化をテーマにした国際シンポジウムを開催して、各界有識者との交流を深める機会を提供することとした。
開会に臨み、津室社長は、当社の創業100年を記念して催すこのシンポジウムから議論の輪が広がり、新しい動きが生まれることを期待すると挨拶した。シンポジウムの概要は次のとおりであった。
主催=大林組 後援=大阪21世紀協会・毎日新聞社・毎日放送
コーディネーター=小松左京
平成3年9月19日 午後1時30分~5時 大阪国際交流センター
参加者 約850人
講演者・パネリスト
ジョン・ネイスビッツ(エコノミスト、メガトレンド社長、元米国大統領特別補佐官)、スメット・ジュムサイ(タイ・建築家)、オーティス・ケーリ(同志社大学教授)、残間里江子(メディアプロデューサー)、鳴海邦碩(大阪大学助教授)、端 信行(国立民族学博物館助教授)、福田繁雄(グラフィックデザイナー)
●おおばやしテクノフェア<OTF100>
平成4年4月13~18日、東京晴海・日本建築センターHARUMIドーム21で開かれたおおばやしテクノフェアは、次のように三つのセクションより構成し、当社の過去・未来を紹介した。
- 写真を中心に、当社100年の歩み
- 新建設システム・オーシックス(O-SICS)をメインテーマとして、映像・デモンストレーションを交えながら、次の変化に向けて積極的に取り組む当社の姿
- 「知恵と勇気を最大限に生かした価値ある空間づくり」をテーマとして、都市、地下、宇宙に明日の夢を探る未来プロジェクト
なお、東京に続いて大阪では、5月27~29日、マイドームおおさかにおいて同様の催しを行った。
●寄付
当社は、米国スタンフォード大学に社員を留学生として数多く送ってきたが、今回創業100年の記念事業として、同大学工学部に大林講座を寄付・開設した。
国内においても2年3月、国際大学に研究振興の目的のための寄付を行った。
●施設の建設
6年夏竣工を目標に、当社の自社開発によるリバーサイド隅田開発プロジェクトが3年6月着工した。ここには、独身寮・単身寮と研修所の建設も計画されている。
また、東京都内に新本社ビルの建設が予定されている。
●社史の編纂
『大林組百年史』の刊行を決定した。また、3年10月にはビジュアルな略史『時・人・大林 1892-1991』を刊行し、得意先等に贈呈した。
●記念品贈呈
記念式典および招待宴開催時に次のとおり記念品を贈呈した。
得意先……クリストフル・ボトルオープナー
大林家・役員ほか……マッピン&ウエッブ・フォトフレーム
従業員・関係会社・柏会……クリストフル・ボトルオープナー
協力会社……クリスタルペーパーウエイト
●記念配当
3年3月期に特別配当1円を行ったが、3年9月中間期および4年3月期には創業100年記念として、普通配当4円に加えそれぞれ1円50銭(年11円)を配当し株主に報いた。
●記念賞与
3年10月14日、従業員全員に対し一律に記念賞与を与え、創業100年を機にその労に報いた。
●招待会、招待宴
得意先には日頃のご愛顧を感謝し、協力会社にはその協力に感謝し、ともにこの日を祝うため、次の日程で招待会、招待宴を開催した。
得意先招待会
3年10月17日 東京・ホテルオークラ(約2,600人出席)
3年10月23日 大阪・都ホテル大阪(約1,600人出席)
協力会社招待宴
3年10月25日~11月15日、東京本社・本店・各支店ごとに以下の会場で開催、約5,000社を招待した。
京王プラザホテル札幌、ホテルメトロポリタン仙台、ロイヤルパークホテル(東京本社)、ホテルリッチ横浜、名古屋東急ホテル、南海サウスタワーホテル大阪(本店)、オークラホテル新潟、ホテルオークラ神戸、広島ターミナルホテル、オークラホテル丸亀(四国)、西鉄グランドホテル(九州)
●海外パーティ
海外事業所においても3年11月19日~4年1月28日の間、関係者(約2,400人)を招待して次のとおりホテルでパーティを催し、当社から石井副会長、津室社長、井辻副社長、大林副社長らが出席した。
ニューヨーク=The Pierre ロサンゼルス=Marriott JW
ロンドン=Inn on the park バンコック=The Oriental
シンガポール=Shangri-La Hotel ホノルル=Royal Hawaiian
ジャカルタ=Mandarin Oriental Jakarta
●家族同伴行事(関係会社、柏会を含む)
3年8月3日~12月7日、東京本社・本店・各支店単位で以下の行事が行われた。