六 内助と輔佐 3 輔佐の白杉龜造氏
白杉氏の手腕、閲歴、人格等は餘りにもよく世間に知れ渡つてゐて、しかも今に猶健在で在職四十一年に達してゐる。しかして本傳記編纂の監修に任ぜられてゐる關係上、氏の丕績(ひせき)に對する編者の禮讃を自畫自讃に類するものとなし、絶對にその記述を禁止されてゐるので遺憾ながら多岐多樣に亙(わた)る氏の描寫はこれを他日に讓ることにした。
要するに故人は、かくの如き良妻があり、かくの如き良將があつたればこそ、華々しく自己の生涯を飾り得たと同時に、故人そのものが將に將たる王者の偉材たりしを雄辯に物語るものであつて、もし故人にして匹夫野人の材に過ぎなかつたならば、爰(ここ)んぞかくの如き良妻良將を率ひることが出來得たであらうか。